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東京科学大学発!光サーキュレーター研究の最前線:シリコンフォトニクスを変える技術

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光通信の世界では、信号を一方向にだけ通す「サーキュレーター」が重要な役割を担っています。東京工業大学(現・東京科学大学)はこの分野で長年の研究実績を持ち、特にシリコンフォトニクスに組み込める集積型デバイスの開発で世界をリードしています。本記事では、2024年10月の大学統合で生まれた新しい組織体制のもと、現在進行形で進む研究内容や、従来の常識を覆す「磁気不要」型デバイスの可能性まで、最新の知見をもとに徹底解説します。

東京工業大学(現・東京科学大学)のサーキュレーター研究とは

サーキュレーターは、光ファイバー通信やレーダーシステムなどで使われる非相反デバイスの一種です。信号を一方通行にすることで、反射光がレーザー光源に戻るのを防いだり、一つのアンテナで送受信を同時に行ったりすることを可能にします。

東京科学大学(旧・東京工業大学)の研究グループは、このサーキュレーターをシリコン基板上に作り込む技術で世界的に知られています。従来の光サーキュレーターは大きくて高価でしたが、シリコンフォトニクス技術と組み合わせることで、小型で量産可能なデバイスへの道を切り開いています。

水本哲也教授、庄司雄哉准教授らを中心とする研究チームは、特に磁気光学材料をシリコン導波路に直接接合する独自技術を開発。2018年には、表面活性化直接接合技術を用いてCe:YIG(セリウム添加イットリウム鉄ガーネット)をSOI(Silicon-On-Insulator)導波路上に形成し、1550nm帯でアイソレーション30dB以上を達成する光サーキュレーターの作製に成功しています(Mizumoto, T., Shoji, Y., “Optical Nonreciprocal Devices Fabricated with Directly Bonded Magneto-Optical Garnet”, Latin America Optics and Photonics Conference, 2018)。

40年以上にわたる研究の歩み:電子回路から光デバイスへ

東京科学大学におけるサーキュレーター研究の歴史は、実に40年以上に遡ります。研究の変遷を時系列で追うことで、現在の光サーキュレーター研究がどのような流れの上に成り立っているのかが見えてきます。

1980年代:電子サーキュレーターの基礎を築く

1980年、當時の東京工業大學でNaito氏らは、800MHz帯で動作する新しいタイプの電子サーキュレーターを提案しました(Naito, Y., Iwakuni, M., Araki, K., Ikeda, A., “A New-Type of Electronic Circulator at 800MHz Band”, 10th European Microwave Conference, 1980)。特徴は、従来のフェライトを使わずトランジスタを用いた能動型の回路で構成されている点。モノリシック集積回路への適合性が高く、当時としては画期的なアプローチでした。

2000年代:ミリ波帯への展開

その後、研究はミリ波帯へと拡張されました。Muraguchi氏らは、オープン境界構造における非相反デバイスとして、方向性結合器型・ピルボックス共振器型・接合型のサーキュレーターを提案。ミリ波集積回路への応用を視野に入れた研究が進められました(Muraguchi, M., Naito, Y., “Nonreciprocal devices in open-boundary structures for millimeter-wave integrated circuits”, Electronics and Communications in Japan, 2008)。

2010年代:光サーキュレーターへ本格参入

研究の大きな転換点は、シリコンフォトニクスとの融合です。SOI導波路上に磁気光学材料を直接接合する技術が確立され、光通信帯(1550nm)でのデバイス実証が相次ぎました。前述のCe:YIG接合型デバイスはその代表例であり、MZI(マッハ・ツェンダー干渉計)型の構成で優れた非相反特性を実現しています。

2023年:モード発展型という新たなアプローチ

2023年9月には、Liu Shuyuan氏による博士論文「Mode-evolution-based integrated magneto-optical isolators and circulators on silicon platforms」が東京工業大学で授与されました(2023年9月22日)。モード発展型という新しい方式を採用することで、従来のMZI型とは異なるアプローチから集積化を図る研究が進められていることがわかります。

今、注目すべき「磁気不要型(Magnetless)」光サーキュレーター

2023年から2024年にかけて、東京科学大学ではさらに革新的な研究プロジェクトが進行していました。それが、コバルトフェライト(CoFe2O4、通称CFO)薄膜を用いた磁気不要型光サーキュレーターの研究です(FAPESP研究プロジェクト Grant: 22/02391-6, 研究期間:2023年2月〜2024年1月)。

従来の磁気光学型サーキュレーターは、外部から磁場をかける必要がありました。しかしCFOは高い残留磁化を持つため、一度磁化させれば外部磁場がなくても非相反効果を持続できます。さらにファラデー回転係数が大きいため、デバイス自体の小型化にも有利です。

この「磁場不要」という特性は、実用化において大きなアドバンテージとなります。外部磁場発生のためのコイルや永久磁石が不要になることで、よりコンパクトで低コストなデバイスが実現可能になります。光通信システムのさらなる集積化・省電力化に貢献する技術として、今後の研究展開が注目されています。

シリコンフォトニクス実装における技術的優位性

東京科学大学のアプローチが他の研究機関と一線を画すのは、磁気光学位相シフトを利用している点です。

従来の光アイソレーターやサーキュレーターでは、ファラデー効果による偏波回転を利用するのが一般的でした。しかしシリコン導波路では、TEモードとTMモードの間で位相整合を取るのが難しく、デバイス設計が複雑になります。

これに対し、東京科学大学が採用する磁気光学位相シフト方式では、単一偏波(TEモード)で動作可能です。SOI導波路の埋め込み酸化膜層が磁気光学効果を増強する特性も相まって、シリコンフォトニクスプラットフォームとの親和性が非常に高いのが特徴です(Mizumoto, T., Shoji, Y., “Optical nonreciprocal devices for silicon photonics using wafer-bonded magneto-optical garnet materials”, MRS Bulletin, 2018年6月)。

これは、デバイスの歩留まり向上や製造コスト低減にも直結する重要なポイントといえるでしょう。

研究者ネットワークと今後の展望

本研究を主導する研究者は、水本哲也教授、庄司雄哉准教授を中心に、Liu Shuyuan氏ら若手研究者も加わり、活発な研究開発が続けられています。

T2R2(東京科学大学研究者データベース)で確認できる研究業績からも、国際学会での発表や論文掲載が継続的に行われていることがわかります。特に、シリコンフォトニクス分野の国際会議での発表が多く、海外の研究機関との共同研究も視野に入れた活動が展開されていると見られます。

今後の研究の方向性としては、以下のようなポイントが注目されます。

  • 磁気不要型デバイスの更なる性能向上(低挿入損失・高アイソレーション)
  • より広帯域での動作実証
  • 実際の光通信システムへの実装試験
  • 量産技術の確立

おわりに:東京科学大学のサーキュレーター研究が切り拓く未来

2024年10月に東京工業大学と東京医科歯科大学が統合し、東京科学大学が発足しました。新しい組織のもとで、光サーキュレーター研究もさらに発展していくことが期待されます。

40年以上にわたる研究の積み重ねは、今や世界最高水準のシリコンフォトニクス集積型サーキュレーターという形で実を結びつつあります。特に、外部磁場を必要としないCFO薄膜を用いた新しいアプローチは、従来の常識を覆す可能性を秘めており、今後の研究の進展から目が離せません。

光通信のさらなる大容量化・低消費電力化に欠かせないデバイスとして、東京科学大学発のサーキュレーター技術がどのような進化を遂げるのか。引き続き注目していきましょう。

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